「日本にはたくさんの神様がいるの?」「たぬきが人間に化けるの?」
ドイツ・オーデンヴァルト地方のジョスト&ショーベル農場に滞在中、人々との会話からお話が生まれました。
こどもたちは、動物などふしぎな主人公に「なぜ?」「どうして?」と興味を示します。
そんなときはゆっくり、童画を見ながら、お子さんとの会話をはじめてください。
みなさんの楽しい会話が始まります。
「なぜ?」は子どもたちが「ゆめ」を広げる、お母さんやお父さんへのメッセージです。
収録童話
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- 「くもの上の運動会」(対象年齢:幼児~)
- 「カミナリさまと子ねこ」(小学校低学年~)
- 「いたずら小僧」(小学校高学年~)
- 「牛の目地蔵」(小学校高学年~)
- 「ふしぎな森のなかまたち」(小学校低学年~)
- 「沙漠にふる雪」(小学校高学年~)
- 「ぼく、本だいすき」(小学校高学年~)
「くもの上の運動会」
農場へ行く飛行機の窓からいろんな形に変わる雲を見ながら、このお話ができました。
「おかえりなさい」
たっちゃんはお父さんが大好きです。
「ねえ、ボールであそぼう」
「きょうはだめだ。たっちゃん。ゴメンね」
お父さんはお母さんとお話をはじめました。
「たっちゃん。飛行機に乗らない」
たっちゃんはお父さんの膝に座りました。
「カミナリサマと子ねこ」
ジョスト&ショーベル農場の近くの喫茶店で、マスターから「カミナリさま?日本人は何でも神様なの???」と聞かれて、このお話が浮かんできました。
空の上カミナリ様が住んでいました。
ちかごろ、カミナリ様は雨が降らせず、元気がありません。
仲良しの風の神様が神様の集まりに行こうとやって来ると 、
おおきなおなかをぺっちゃんこにして大声で泣き出しました。
風の神様はカミナリ様をふとんに寝かせ、神様の集まりに出かけました。
すると仲間の神様たちがカミナリ様の悪口を言いだしました。
風の神様はおもしろくありません。
「いたずら小僧」
俺はタヌキ。
俺と両親はひと山越えた森に住んでいた。
ところが大きないくさがあって古いお寺に住みついた。
和尚はたいそうお経好きだった。
和尚は朝、鶏が鳴くと大声でお経を唱え、そして夕暮れにはカラスと声を競い、
木魚をポンポン鳴らしていた。
俺がそんな和尚と出会ったのはわんぱくざかりのころだった。
「和尚、この子タヌキこらしめてくんろ」
「ニワトリは追いかけるわ、畑は食い荒らすわ、どうしょうもない」
「ほんに鼻息の荒いやつじゃ」
手足をきつく捕まれて俺は石臼のような和尚をにらんだ。
しかし、和尚はニコニコしてまったく動かなかった。
「クソ坊主!」
俺はシッポで和尚の顔をたたいた。
ところが和尚はますます目をドジョウのように細めて笑っていた。
「牛の目地蔵」
「おい、こら待て!」
「いや~だよ!」
山奥の小さな村ではよそものをワイワイガヤガヤ追いかける遊びが伝わっていました。
そしてこどもが生まれると
「おお、シカのような長い足だ。こりゃあ、早いぞ」
「クマのような丈夫な体だ。めでたい」
と喜んでいました。
そんなある日、男が重たい荷物を牛にくくりつけ、村の入り口までやってきました。
男は汗を拭きながら
「ああ、喉が渇いた。あそこで休ませてもらおう。お前もいっぱい水を飲ませてやるぞ」
と牛を木につなぎ、ハアハア息を切らせ一軒の家に立ち止まりました。
「ふしぎな森のなかまたち」
西の空にキラりと輝く小さな星があります。
これからその星のハンスという男の子のお話をしましょう 。
ハンスの住む森は野イチゴやぶどうがたくさんとれました。
お母さんとハンスは毎日この実を摘んで、暮らしていました。
ふたりはいつものように森に出かけました。
「ぼく、キノコを探してみるよ」
「遠くへ行っちゃだめよ」
「沙漠にふる雪」
コロンはもうすぐ10歳になります。
今日もお父さんは砂漠のむこうの村へ出かけていきました。
「砂漠のむこうに行ってみたい」
「そうだ!カシムじいさんに聞いてみよう」
コロンは一目散に駆け出しました。
そしてカシムじいさんの家に飛び込みました。
「コロン、どうした?」
コロンはとぎれとぎれに
「砂漠のむこうのお話が聞きたいんだ」
と言いました。カシムはわらいながら
「コロン、わしは若いころ、広い砂漠でいろんな人に会った。
珍しいものもたくさん見た。そりゃ~あ、たのしかった。
ある町は日が沈まないんじゃ。大勢の人が大声で歌い踊るんじゃよ」
コロンはカシムじいさんに顔を近づけました。
「ぼく、本だいすき」
「幸太君、さあ、読んで」
「りょ・・・猟・・・師はふぶきの・・・・・・・の」
「どうしたの? がんばって」
「・・・・・・・・・あの」
幸太は学校が終わると公園に走っていきました。そして
「こんなに大声が出せるのに! くやしいなあ」
と、くつを空にけとばしました。
※引用元『おやすみなさいのそのまえに』